東京事務所の木下です。
先日、プロゴルファーの丸山茂樹選手とお食事をさせていただく機会がありました。
丸山プロは、これまでのキャリアの中で印象的だった世界のゴルフコースのエピソードや、プロゴルファーの食生活、トレーニング、更にはタイガー・ウッズやジャック・ニクラウスなど超有名プロゴルファーとの交流からご自身の引退後の夢まで、プロゴルファーの日常という、我々にとっての非日常について、実に興味深く楽しいお話をして下さいました。
「マルちゃん」の愛称で、国内だけでなく海外でも大活躍されながら、トヨタ自動車の「TーUP」や武田薬品の「アリナミンV」など多数のコマーシャルにも出演され、お茶の間の好感度が抜群の丸山プロですが、実物の好感度はそれ以上です。これまでに比較的たくさんのタレントさんやプロスポーツ選手にお会いさせていただく機会がありましたが、あの知名度にして、あの親しみやすさは、なかなかいらっしゃらないキャラクターだと思います。二次会も含めて、本当に気持ちの良い6時間はあっという間に過ぎてしまいました。
丸山プロとお話していて、何故これほどトークが分かりやすくて、魅了されるのだろうと考えました。そのお話の内容そのものが面白いことは当然ですが、それだけではないように感じたからです。すぐに気付いたことは、その発信力の強さを支える豊かな表情でした。「マルちゃんスマイル」とも言われる、その素敵な笑顔が魅力的なことは言うまでもないのですが、怪我でコンディションが整わなくて苦労されたお話をされるときには苦しそうに顔を歪められ、ややスキャンダラスな話に及ぶときには声を潜めてひそひそと、実に豊かな表情を交えながら、生き生きとお話されるので、自然と会話に引き込まれてしまうのです。
また一方で、丸山プロは大変な聞き上手でもあり、こちらの質問や素朴な疑問にも、一つ一つ質問などの内容に合わせた表情でリアクションを示して下さるので、とてもお話がしやすくて、自然と会話が弾みました。
丸山プロとお話させていただいて思い出したのは、私の近所にある内科の病院の先生のことです。近所には他にも大小たくさんの病院があるにもかかわらず、この小さな病院はとても人気があります。
昨年私が過労で風邪をこじらせて、扁桃腺を大きく腫らしたために、この病院で点滴を受けたことがあるのですが、この先生は、診療の合間の僅かな時間に点滴を受けている私の様子を確認しに来て下さって、我がごとのように辛そうな表情をされながら、「これだけ扁桃腺が腫れていたら、さぞかし痛かったでしょう」、「こんなに身体がきつくなっているぐらいだから、お仕事も休めれば良かったのでしょうけど、休みたくても休めなかったんでしょうね。本当に大変でしたね。」と言葉をかけて下さいました。先生にとってはほんの些細な会話だったかもしれませんが、実際に私はとても辛くて弱っていたので、温かい言葉だけでなく、私の痛みを一緒に感じ取ろうとしてくれるような先生の表情に、心から救われる思いがして、涙が出るほど嬉しかったことを覚えています。
「はい、風邪ですね。体力が落ちているから、点滴を受けて帰って下さい。」と事務的に言われただけでは、治療としては同等で十分足りているのかもしれませんが、おそらくこのような嬉しさはなく、先生の言葉に共感もしなかったと思います。痛みや辛さを理解しようとする気持ちを映す表情によって、言葉は何倍にも強いものになり、より説得力が増すため、不思議なもので、それだけで幾らか身体までもが楽になったような気がしました。このお医者さんが人気があることもよく分かります。
丸山プロやこのお医者さんに共通することは、しっかりと自らの言葉で語り、相手の言葉に真摯に耳を傾けてくれるだけでなく、常にその会話に相応しい表情を伴って、丁寧に語ったり聞いたりされることです。
これはコミュニケーション能力の基本なのかもしれませんが、プロゴルファーや医師以上に人間との会話を仕事のベースとしているはずの我々弁護士でも、こういうことがきちんとできる人は限られているように思います。
私は、時々言葉の持つ力は本当に絶大だと感じます。言葉は癒しの秘薬にも毒や凶器にもなりますから、我々弁護士は、もっとコミュニケーション能力を磨くとともに、言葉の持つ大きな力とそれを支える会話中の表情について、深く考える必要があるように思います。
丸山プロは、ツアープロ間での日頃の挨拶や、真剣勝負の試合とはいえども、ラウンド中の最低限のコミュニケーションについても、ご自身の考えを話してくれました。やはり一流の人間は、そういうゴルフには直接関係のない所作についても、しっかりできているということなのだと思います。丸山プロのお陰で、普段弁護士としても見失うべきではない大切なことを再確認できました。
丸山プロとは、次回はゴルフツアーの応援に行って、その日のゴルフの試合を観戦してから、お食事をさせていただきたく約束をしました。またお話させていただく機会がとても楽しみです。

