リーガルジャパン代表弁護士の木下です。
我々の弁護士法人では、これまでローテーションを組んで平日にブログを更新してきました。しかし、他方で土日などの休日にゆっくりとブログを見て下さる方も多いので、今年から休日の中の一日をブログの更新に当てて、私は主にこちらの方を担当させていただこうと考えています。今後ともよろしくお願いします。
さて、皆さんは外食されるときに「食べログ」という検索サイトを利用されたことがありますか?様々な飲食物がジャンル別で利用者の人気投票によるランキング形式になっていて、新しいお店に伺うときにはなかなか参考になる優れものですが、他方実際に食べてみると、どうしてこのお店がベストテンに入っているのか、首を傾げたくなることもあると言われていました。
先日、この食べログのやらせ投稿を有料で請け負っている会社の存在が発覚して、悲喜こもごもの話題になっています。裏切られたと感じる食べログファンも多いでしょうし、「絶対におかしいと思ってたんだよ!!ランキングが上のあの店より、どう考えてもうちの方が旨いでしょう!?」と、逆にこのニュースに喜ばれた飲食業者も多かったと思います。信用を傷つけられた食べログの運営会社も提訴を辞さないとしていますが、こういう「やらせ」に対してはどのような規制があるかご存知でしょうか?
一般に騙したり騙されたりの類の不正については、すぐに「詐欺」という犯罪をイメージされる方が多いと思うのですが、詐欺は欺罔行為によって財産を騙し取る犯罪ですから、このやらせ投稿によって、すぐに誰かが詐欺で捕まるわけではないです。
実はこのような広告や宣伝に関する不当な表示については、不当景品類及び不当表示防止法(いわゆる「景表法」)による規制があり、我々消費者は法的に保護されているのです。景表法では事業者の供給する商品や役務の取引について、いくつかの類型で不当表示を禁止しています。主な規制の類型は品質や価格に関するものです。難しい条文上の文言によりますと、「商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し…、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの」(景表法第4条1項1号)などが規制されます。
この景表法という法律、皆さんは余り聞き慣れなくて馴染みがないかもしれませんが、意外と日常でお世話になっている法律なのです。皆さんはチラシや貼り紙などの広告で、魅力的なセールストークに心を踊らせる機会はないでしょうか?自慢ではないですが、私は結構あります(笑)。大特価とか限定〇〇個と言われるとソワソワしてしまうときがあります。しかし、このような広告も、消費者の心理につけ込んでやり過ぎると、消費者側が多大な被害を被ります。そこで、この悪質な広告による粗悪な商品や役務から我々消費者を守ってくれている強い味方が正に景表法というわけです。
具体例を上げてみます。
例えば、価格に関して、
①メーカーの希望小売価格は20万円なのに、「メーカー希望小売価格30万円のものを、20万円」とする表示
②実際に3割引する商品はごく一部なのに、「在庫処分につき全品3割引」とする表示
③実際はもともと粗悪品だったり、キズがあるため、市価相当額なのに、「市価の半値以下」とする表示
また、数量に関して、
④普通の人には3人前の分量しかないフルーツの缶詰めに「5人前」とする表示
その他取引条件に関して、
⑤既に電化製品の商品代の一部として配送料を徴収しておきながら、「無料配送」とする表示
さらに他の競争相手との比較に関して、
⑥自社のビニール製雨戸と競争事業者の雨戸の価格を具体的に比較して、自社製品の価格の安さを表示しているものの、競争事業者の雨戸は良質の材料を使用したもので、等級にかなりの差がある表示
これらはぜ~んぶ不当表示に当たるとして排除された事例です。中には少し笑ってしまいそうになる不当表示もありますが、競争に勝ち抜くために売り手も必死ですし、このような不当表示に意外と簡単に引っかかる自分がいることも分かっていますから、私としては笑うに笑えません。
私は、この景表法のような日常生活に密着した相談事は扱うのが比較的得意で好きな分野です。ただ、実際には消費者側の相談よりも、特売セールを企画している売り手側から、この広告はセーフかアウトかという問合せを受ける機会の方が多いです。そして、かつて甘いセールストークに引っ掛かって痛い目に遭った経験も活かして、的確なリーガルアドバイスができますから、やはり弁護士にとって、何事も経験が大切だと思います。
いずれにしても、不当な広告によって苦々しい思いをするのは、誰にとっても嬉しいことではないですから、やらせ投稿によって不当にランキングを上げているようなお店には厳しく対処して欲しいです。一方、我々消費者にとって、広告は広告で必要なのですから、そちらについては、正々堂々と、しかしながらすぐにお店に飛んで行きたくなるような魅力的な表示を心掛けて欲しいものですね。