アクティブイノベーションウエスト代表弁護士の木下です。
先日、東京ドームシティアトラクションズのコースターで転落死亡事故が発生しました。
事故原因ですが、報道によると、このコースターは乗車時に足元にある安全バーを手前に引き、腹部から下を固定する仕組みだったのですが、この安全バーがきちんと下り切っていなかった可能性が疑われています。
まず、法律的には、運営会社の東京ドームは、アルバイト従業員の過失に基づく損害についても、賠償などの法的責任を負います。使用者責任という考え方で、要するに会社が従業員を使うことで売上などの利益を得ている以上、その従業員の落ち度によって、業務中に損害が発生したときには、従業員だけに責任を押し付けるのは不公平で、会社も一緒に責任を負うべきだという考えです。したがって、従業員による安全確認の方法が十分だったのか、つまり従業員に過失があったのかは、東京ドームの損害賠償責任を考える上で、大きなポイントになります。
報道上も、アルバイト従業員の安全確認が十分だったかどうかの取り扱いが多かったように感じました。
しかし、私は、このコースターの仕組みを知るにつれて、そもそも従業員の確認不足の落ち度を責める以前に、東京ドームの落ち度があったのではないかと思っています。
まず、このコースターはS字状のレールを下りながら蛇行し、カーブでは遠心力が加わって、コースター自体も水平に回転する構造になっていたそうです。これは車自体がスピンしながら、急カーブを連続して曲がるようなものです。しかも、転落地点は地上から約8メートルの高さだったようですが、このコースターの最高地点は約11メートルもあるそうですから、連続宙返りするジェットコースターのような派手さはないものの、実はこのコースターはかなり危険度の高い乗り物で、確実な安全装置の発動が不可欠だったと言えます。そうすると、アルバイト従業員が手で触るのか、声掛けするのか、どちらが適切かというレベルではなく、そもそも安全バーがセットされていなくても、このような危険度の高いコースターを発進することができる仕組みで運用していたこと自体に、落ち度があるとも考えられるわけです。
この点、従業員の過失を根拠に使用者責任が問われようと、東京ドームそのものが直接過失を問われようと、東京ドームの損害賠償責任に一見大差はないようにも思われます。
しかしながら、この種の事故が争いになりますと、残念ながら、かなりの確率で被害に遭われた利用者の方にも落ち度はなかったのか、いわゆる過失相殺を巡って、損害金が減額されるべきかどうかが争われます。
そして、このコースターは、まず安全バーを利用者が自分で下ろして体を固定し、その後、アルバイト従業員が順番に固定状況を確認して回る流れになっていたようですから、仮に従業員の確認不足をポイントにして、使用者責任を問うのであれば、従業員も不注意だったかもしれないが、利用者の方も安全バーがきちんとセットされてないことを自ら告げるべきで、それを怠った分は、損害から減額されるべきだという議論に巻き込まれるリスクがあります。
一方、私のように、このような構造のコースターを運用すること自体が、東京ドームの落ち度ではないかと考えると、安全確認方法は直接のポイントにならず、それ以前の落ち度が問われますから、利用者側の過失相殺による減額リスクは、使用者責任を問う場合よりは小さくなる可能性があります。
何の落ち度を問うかで、結論に差が出る可能性があるわけですね。
いずれにしても、以前と比べて、大柄な人など日本人の体型も相当多様化してきたこともあって、画一的な乗り物の安全装置のセットについて、人的に一つ一つを全て確認することには限界が出てきていると思います。いわゆるスリル度の高いアトラクションも増えていますから、各乗り物の危険度に合わせて、人的なチェックだけに頼らない安全装置を構築する必要があるように思います。