アクティブイノベーションウエスト代表弁護士の木下です。

   先週末、福岡支店長の清田弁護士や司法書士法人の代表たちと、仕事で上海に行ってきました。上海に行くのは6年ぶりでしたが、地上100階建ての超高層ビルが完成していたりして、また一段と経済成長が進んだ印象です。その成長を示すものの一つに、上海リニアモーターカーも含まれています(リニアモーターカーとは、リニアモーターによって駆動する鉄道車両のことですから、厳密には磁気浮上式、鉄輪式、空気浮上式などに分けられるようですが、以下では「maglev」と呼ばれる磁気浮上式のことをお話します)。
   私は今回初めてリニアモーターカーに乗車したのですが、最高時速430キロメートルで走行するスピードは想像以上にすごいものでした。最初はちょっと恐いくらいに感じました。並走する高速道路の自動車がすべて止まっているように見えて、次々と車窓を流れる景色の変化から感じる疾走感は、さすがに近未来の乗り物と呼ばれるのに相応しいと思いました。余りに速いので、逆に減速してきて100キロメートルほどになった時には、外の車両がものすごく徐行しているような感覚になり、このスピードなら自分たちの足でも走れるような奇妙な錯覚を覚えたのが面白かったです。その圧倒的なスピードに反して振動は少なく、加速も非常に滑らかだったことにも驚きました。

   さて、このリニアモーターカーについては、東京~大阪間の完成を目指して、現在日本でも計画中です。しかし、その完成予定時期は、東京~名古屋間で2025年、大阪まで延伸するのは2045年と、まだまだ遥か先になっています。
   それでは日本にはそれだけの技術しかないのかというと、そうではなくて、リニアモーターカーの有人試験走行では、日本は既に世界最速の581キロメートルを記録しているそうです。そうすると、ますます腑に落ちません。既に中国で実用化できていることが、何故日本ではそんなに先までできないのか?日本でリニアモーターカーの走行に関する規制や許可はどうなっているのでしょうか?
   この点、鉄道事業の運営については、国鉄の民営化に伴って制定された鉄道事業法(通称・鉄事法)があります。鉄道事業を経営しようとする者は、国土交通大臣の許可を得なくてはならず(鉄事法第3条)、そのためには「鉄道の種類」や「計画供給輸送力」などを記載した事業基本計画を提出しなくてはなりません(鉄事法第4条)。
   そして、この「鉄道の種類」として、鉄事法施行令第4条は、合計8つの鉄道のカテゴリーを列挙していますが、これが中国語風でちょっと難しい記載です。例えば、同条2号の「懸垂式(けんすいしき)鉄道」や3号「跨座式(こざしき)鉄道」とは何のことかお分かりになるでしょうか?これらは共にモノレールのことで、前者はレールに車両がぶら下がっているタイプ(上野動物園など)、後者は車両の下にレールがあるタイプ(東京モノレールや、モノレールとして世界最長の営業距離である大阪モノレールなど)を指しています。また、5号には「無軌条電車」、すなわち道路上に張られた架線から取った電気を動力として走るトロリーバスが規定されています。6号の「鋼索鉄道」も分かりにくいですが、鋼索とはケーブルのことです。したがって、これは鋼索で繋がれた車両を巻き上げて山岳などを運転する鉄道、要するにケーブルカーを指しています。そして第7号が「浮上式鉄道」、磁力による反発力などを利用して車体を軌道から浮上させて推進するリニアモーターカーが代表格です。ということは、リニアモーターカーは、現状では数ある「鉄道」の一つとしてざっくりと列挙されながら、国の許可を受けることになります。この近未来型の乗り物が特別扱いもされないで、トロリーバスやケーブルカーと同じ括りでまとめて規制されているわけですから、どうにもスピード感に欠けるのも頷ける印象です。勿論、政治経済上の理由や建設する際の地理的な特徴など様々な要因があり、このような鉄事法の規定の仕方だけが理由ではないことは分かっていますが、これでは正直なところ、威信をかけた国家的プロジェクトとして、一体となってリニアモーターカーの建設を推進している中国に太刀打ちできるわけがないです。

   実は今回の出張は、中国がアジア最大のハブ空港を目指している、上海虹橋新港のプロジェクトに関連するもので空港も視察しましたが、そのスケールの大きさや最新の広告テクノロジーに圧倒されましたし、大いに刺激を受けました。この上海虹橋新港のプロジェクトについては、今後も当ブログでお話させていただく機会があると思います。
   結局、リニアモーターカーと同じなのですが、このようなビックプロジェクトを推進する中国という国のパワーにはすごいものがあると思いました。日本の政治家が足の引っ張り合いばかりをしているのと比べると、国家レベルの推進力は比較にならないです。中国に対して好印象を持っていない日本人も多いでしょうが、私は、今回の出張を終えて、自分には日本人としての奢りがあったと思いましたし、中国が持つこのようなパワーには、素直に畏敬の気持ちを持ちました。このスピード感や一体感は見習うべきです。そして、おそらくこれは、国家レベルだけではなく、方法論としては会社レベルでも参考になるところが多いはずですから、今年は中国の歴史、文化、国民性などを徹底的に掘り下げて勉強してみようと思っています。