今年の夏の全国高校野球選手権大会は、群馬県代表の前橋育英高校が初出場で初優勝しました。
関西の人にとって、北関東の都道府県は馴染みが薄いことが多く、残念ながら群馬県は関西では印象の薄い県の一つだと思います。私の妻は群馬県出身ですが、出身地を尋ねられて群馬県と答えると、多くの関西の方が会話に窮して沈黙するため、気まずくなって、申し訳なくなるときがあるようです。私も、関西出身の者として、当初例外ではなかったのですが、このように妻の実家が前橋の近くなので、今では群馬県は馴染みのある地域となりました。特に私は、裾野の長い個性的な赤城山や上州名物である焼きまんじゅうの素朴な焦がし味噌ダレの味が好きなので、関西の人間としては珍しい群馬通だと思います。そのため、前橋育英の応援にも力が入り、1点差の好ゲームとなった決勝戦は、かなりドキドキしながら仕事の合間に観ていました。
攻守のバランスが取れていて、戦略的な監督の采配も光った前橋育英ですが、やはり注目は2年生エース高橋光成投手でした。準決勝まで防御率0.00の高橋君の投球を何試合か見ましたが、高橋君が一番凄いのは、平常時とピンチの投球の凄みが明らかに違うこと、また試合の序盤と終盤の投球がかなり異なることです。高橋君は、ピンチになればなるほど厳しい球を投げることができるし、終盤になるほどギアチェンジして球威が増すことが多いです。このようにピンチに強く、苦しいはずの終盤に逆にギアを上げてくる投手といえば、現在開幕18連勝中の楽天のエース田中将大投手を思い浮かべますが、高橋君もプロとはレベルが違うものの、いわゆる「勝てるピッチャー」という特徴を持っていて、本当に将来が楽しみだと感じました。
ところで、今年の高校野球は、準々決勝と準決勝の間に初めて休息日が設けられたことで話題になりました。
私が子供の頃は、準々決勝4試合を一日で消化した後、間を置かずに連日準決勝、決勝と消化する日程でした。そのため、従来は三回戦から決勝まで、酷暑の中、実に4連戦になるチームがあり、高校生には過酷過ぎるという批判がありました。そこで、暫く前から、準々決勝が2試合ずつ2日に分けられることになりましたが、それでも準々決勝から決勝まで3連戦になり、過度の疲労から肝心の決勝で実力を出しきれないで大敗するチームもあったため、今年から以前のように準々決勝を一日で消化して、その代わりに休息日を設ける方式に変更されたわけです。この方式だと、準々決勝を2日に分ける大会方式と比べても、大会日数そのものは増やさなくて済むし、どのチームにも必ず準決勝の前に休息日が与えられるため、肝心の準決勝や決勝はかなりフェアで、実力を発揮しやすい戦いになりました。
決勝も含めて、今年の高校野球の終盤戦は好ゲームが多かったのですが、その陰にこの高野連のファインプレーがあるように思います。
また、この日程変更は、終盤戦の好ゲーム以外にも、もう一つの大きな効果をもたしました。選手の健康や安全を守るという管理的な効果です。
実は前橋育英は、準々決勝で9回2死走者なしから2点差を追い付いて、延長戦の末に強豪常総学院に劇的な逆転勝ちを収めましたが、その重要なターニングポイントとして、常総学院のエースが熱中症のため、最終回のマウンドに上がれなくなったことがありました。これは本当に気の毒でしたが、猛暑の中の高校野球という、現代の悩みを象徴する事件でもありました。この酷暑ですから無理もないことですが、主催者である高野連には安全配慮義務といって、大会に参加する選手の体調の安全に配慮する法的な義務があります。熱中症のために事故が起こり、万が一選手が死傷するようなことになれば、高野連は安全配慮義務違反の法的責任を問われるリスクがありますが、これまでのやり方だと、特に準決勝や決勝の大きな事故が心配で、この点からも高野連による方式の変更はファインプレーだったように思います。
選手の方は本当に大変でしょうが、体調に気を付けて、来年も素晴らしいプレーを見せて欲しいし、更に環境が変化するのであれば、高野連は安全配慮義務に配慮した一層有効な対策を立てて、これからも選手の皆さんが十分に実力を発揮できるサポートをしてあげて欲しいと思います。