アクティブイノベーションウエスト代表弁護士の木下です。

 先日、小笠原諸島とともに平泉がユネスコから世界遺産に登録される見通しになったというニュースがありました。震災後の東北地方にとって、明るい話題になってよかったです。
 近年世界遺産の肩書きは絶大なものがあり、登録後に観光客が急増する顕著な効果があります。私も、昨年白川郷に行きましたが、名古屋から相当離れていて、必ずしもアクセスがよいわけではないにもかかわらず、外国人を含む多数の観光客が訪れていたことには驚きました。
 もっとも、例えば平泉の中尊寺金色堂は、世界遺産になるから突然価値が認められるというわけではなく、以前から「国宝」として、きちんと保護されてきました。このように観光地において、「国宝」とか「名勝」という看板を目にすることがよくありますが、日本独自の文化財の保護や格付けはどうなっているのでしょうか?

 この点、文化財を保存し、その活用を図り、国民の文化的向上に資するとともに、世界文化の進歩に貢献するために、文化財保護法(通称「文財法」)があります(文財法第1条)。
 そこでは、建造物、絵画、彫刻、工芸品などの有形の文化的所産で、我が国にとって歴史上又は芸術上価値の高いものなどを有形文化財といいます(文財法第2条1項)。有形文化財のうち重要なものは重要文化財に指定されます(文財法第27条1項)。そして、重要文化財のうち世界文化の見地から価値の高いもので、国民の宝たるものを国宝に指定できます(文財法第27条2項)。
 平泉の中でも、特に有名な中尊寺金色堂は、文財法施行後、早々に国宝に指定されています。文財法によれば、国宝はワールドスタンダードに基づいて、重要文化財の中から特別に指定されるものですから、建前上は世界遺産の称号が与えられても驚きではない至宝と考えられます。
 一方、①貝塚、古墳、城跡、旧宅その他の遺跡で、我が国にとって歴史上又は学術上価値の高いもの、②庭園、橋梁、峡谷、海浜、山岳その他の名勝地で、我が国にとって芸術上又は鑑賞上価値の高いもの、並びに、③動物、植物及び地質鉱物で、我が国にとって学術上価値の高いものを記念物といいます(第2条4項)。一口に法的に「記念物」といっても、価値のある①遺跡、②自然景観、③動植物などの総称であるわけです。この記念物のうち重要なものは、史跡、名勝又は天然記念物に指定されます(第109条1項)。そして、そのような史跡名勝天然記念物のうち、特に重要なものを特別史跡、特別名勝又は特別天然記念物に指定することができるのです(第109条2項)。
 ということは、「国宝」と「名勝」は、有形文化財と自然景観系の記念物という分類系統が異なるだけで、ともに歴史上、芸術上、鑑賞上の価値が高い重要なものとして指定されていることは同じです。主に分類系統の違いですから、観光においての優先順位は、好みでしかないということになりそうですが、重要文化財のうち、特に価値の高いものが国宝ですから、序列的には国宝は名勝よりも格上で、一般的には観光においてのお勧め度も高そうです。名勝の中でも特に重要な特別名勝であれば、国宝級として同格になってくると思います(有形文化財→重要文化財→国宝と記念物→名勝→特別名勝の順の格付けになります)。
 
 とはいっても、やはり最終的には、歴史的建造物が好きか、自然景観が好きかの好みによるところが大きいですよね。
 私は、自然景観派なので、以前平泉に訪れたときも、金色堂が美しかったことを覚えているくらいで、もう少しきちんと歴史的背景を勉強してよく見ておけばよかったです。平泉や小笠原諸島が世界遺産に登録される機会だからこそ、改めて日本独自の文化財保護制度も見直して、この機会に世界遺産ではない国宝なども、じっくりと鑑賞してみるのもよいですね。