アクティブイノベーションウエスト代表弁護士の木下です。
先日の日曜日は母の日でした。少し古い弁護士にとって、母の日といえば、真っ先に思い出すのが、毎年5月の第2日曜日、すなわち母の日に実施されていた司法試験の択一試験です。
弁護士になるためには司法試験に合格しなければいけませんが、現在の法科大学院が誕生する前の旧司法試験は、択一試験、論文試験、口述試験の3つがセットになっていました。択一試験は、これに合格しなくては、次の論文試験に進むことができない最初の関門でした。昔は法律知識を問うシンプルな問題が中心でしたが、暗記偏重の試験には批判もあったため、年々論理的な思考力を問う問題が多くなり、晩年は試験時間も3時間30分に延長されました。長時間ではありますが、憲法、民法、刑法各20問からなる60問にかけられる時間は、1問につき3分30秒だけですから、本当にあっという間でした。この3時間30分で、一年間の努力がすべて水の泡となってしまう恐れもありますから、択一試験には論文試験とは異なる独特の緊張感がありました。
私は、択一試験が終わると、毎年下宿先の仙台から実家の母親に宛てて、試験の報告を兼ねて、母の日のお祝いをする電話だけは入れていました。プレゼントを送ってあげた記憶はなく、私の母親も、母の日というと、択一試験を案じていた印象しか残っていないようです。経済的事情もさることながら、当時は私が遠隔地に居住していたので仕方がないという、「遠隔地の抗弁」が通用していたことが大きいです。
ところが、インターネットの普及によって、この「遠隔地の抗弁」は通用しなくなりました。今なら、カーネーションなどの母の日のプレゼントセットが、通信販売で簡単に購入できて、遠隔地にいる母親にも送ることができます。全くもって、便利であり、微妙に不便とも言える世の中になったものです。
ところで、このようなオンラインショッピングは、トラブルも増えているので注意が必要です。トラブルの例としては、実際の商品が広告と違っていたというものが圧倒的に多いようですが、商品の受領が遅れたり、過大な金銭を請求されたりするトラブルもあるようです。オンラインショッピングは、その性質上商品の現物を確認できないし、売主と直接面談して丁寧に売買条件を協議することもできないですから、便利な反面、どうしてもトラブルのリスクはありますね。
このように便利でありながら、トラブルにもなりやすい通販などの取引については、これを規制する特定商取引に関する法律(通称「特商法」)があり、特商法第11条1項各号では、通販のうち、トラブルになることを危惧されて指定された商品については、その商品の販売価格、代金支払時期、返品の可否と条件などについて、広告表示をすることが義務付けられています。先程の母の日のプレゼントセットも、よくご覧になると、特商法に基づく注意書が記載されているのがお分かりになると思います。特に、販売価格については、その中に送料が含まれておらず、購入者が負担すべきときには、販売価格の他に送料も表示しなくてはならず、購入者の取引の安全に配慮されています(特商法第11条1項1号括弧書)。
商品の販売価格を表示していない売主は、さすがに消費者から相手にされないでしょうが、送料や返品の可否などについては曖昧な表現にとどまっていることもあります。したがって、これらの表示が曖昧にしかなされていない通販の売主は、それだけで要注意といえますから、トラブルを回避する判断材料として、是非覚えておいて下さい。