アクティブイノベーションウエスト代表弁護士の木下です。
先日、いわゆる主婦年金問題(夫が会社員や公務員で、自分は保険料を支払わなくても年金がもらえた専業主婦の中で、夫が退社したにもかかわらず、切替手続きをしないで保険料を支払っていない人がいること)で、社会保障審議会が救済策をまとめました。未納保険料について過去10年分の追納を認め、既に年金が過払いになっている受給者には、過去5年分の返還を求めるようです。
当初厚生労働省は、特例で未納期間を納付済みとする通知をしましたが、きちんと保険料を支払ってきた主婦との公平性を考えると論外で、通知を撤回して今回の救済策に落ち着いたのは妥当でしょう。但し、未納保険料の追納を認めるのはいいとして、過払い分の返還については、今後現場レベルでは紛糾すると思います。本来の金額よりも年金を多くもらい過ぎていたわけですから、返すのが当たり前…不当利得(民法第708条)という法律を持ち出すまでもなく簡単な話のはずです。…しかし、現実に一度受け取ってしまったものを返すのは、一度食べてしまったものを吐き出すのと同じように苦しいことで、机上の理屈ほど簡単な話ではありません。たとえ返さなくてはいけないと、頭では分かっていても…です。
私は、以前損保会社の代理人として、誤払い保険金の返還を担当したことがあります。保険会社の単純な計算間違いで、明らかな誤払いでしたが、本来の金額よりも多額の保険金を受領していた相手方は簡単には返金してくれませんでした。一度受け取ったお金を返すことが、いかに苦痛かを力説されて、慰謝料を請求したいとおっしゃるのです。このまま長期化すると裁判になるリスクなどを何度も説明して、かなり苦労して返金していただいたことを覚えています。
皆さんは、この誤払いの返金について、どう思われるでしょうか?
慰謝料と呼ぶのが適切かどうかは別にして、受領した側が誤払いであることを知らなかった場合、たしかに一旦受け取ったお金を返すのは苦痛ですね。既に消費している場合は当然ですが、このお金を当てにしていろいろと計画を立てている場合も、かなり気の毒だと思います。年金のケースはほぼ消費してしまっていますから、当然紛糾すると思います。
月並みですが、お金の支払いは、払う側も受け取る側も、慎重に金額をご確認下さい…ということですね。