アクティブイノベーションウエスト代表弁護士の木下です。

   大阪地検特捜部のフロッピーディスク改ざん事件を隠した罪で、元特捜部長らに対する刑事裁判の公判が始まりました。今後、フロッピーディスクを改ざんした元主任検事の前田受刑者(懲役1年6月の実刑)は勿論、前大阪地検検事正や現役検事までもが証人として出廷するらしく、元検事らが古巣の検察と全面対決する正に異例の事件となりました。
   個人的には前田受刑者は私の同期で、司法研修所のクラスは違っていたので直接の面識はなかったのですが、とても優秀な方だったらしく残念に思います。

   さて、今回元特捜部長らが問われているのは犯人隠避罪という罪ですが(刑法第103条)、一般の方には余り聞き慣れない犯罪かもしれませんので、今日はこの罪の説明をします。
   犯人隠避罪とは、罰金以上の刑にあたる罪を犯した者などを隠避させた者に対する罪で、二年以下の懲役などに処せられます。この隠避とは捜査機関による発見や逮捕を免れさせる一切の行為を意味します。変装用の衣服や逃走のための旅費を渡すなどの有形的方法から、犯人の依頼に応じて、自分の留守宅の張り込みなど捜査状況を知らせて逃走を手助けすることなどの無形的方法も含まれます。

   この説明を聞いて、善良な一般の方は、自分がそんな犯罪を犯す場面はあり得ないし、自分には無縁の話だと思われるかもしれませんが、意外に巻き込まれてしまうケースとして身代わり犯人になること、特に交通事故で身代わりを申し出る場合があるので要注意です。
   例えば、テレビドラマなどでカップルがドライブ中、歩行者を怪我させてしまったときに、運転者の運転免許の点数やら勤務先との関係やらで、同乗者を運転者に仕立て上げて、事故を起こした人を虚偽申告するようなシーンがあります。現実的にスキャンダルがイメージダウンに直結する、タレントやプロスポーツ選手は勿論、最近だと労務管理に特に厳しい公務員なども、身代わり運転者をお願いしたい強い衝動に駆られることは理解できます。
   しかしながら、この身代わり犯人の申告は、明らかに捜査機関による真犯人の発見や逮捕を免れさせる行為になりますから、たとえ悪意はなくても犯人隠避罪に該当して、残念ながら真犯人共々逮捕されることになってしまいます。
   さすがに、いかに親しい間柄の人に頼まれても、逃走用の資金援助などの直接的方法を取るケースは限れていると思いますが、自動車に接触した歩行者が倒れている間に、「俺、点数ヤバいんだよ~。後でお礼するから」と強引に頼み込まれて、その勢いに負けて「可哀想だし、まっ、いいか」と運転席とポジションを代わってしまうケースは、現実にも時々あるようです。おそらく、家族のため、恋人のため、友達のためと思っての行為で、罪の意識はほとんどないのでしょうが、立派な犯罪になりますから気をつけて下さい。

   そのような身近に潜む犯人隠避罪の危険性も想像しながら、この稀有な検察対元検事らのガチンコの大裁判の結末に注目していただきたいと思います。