アクティブイノベーションウエスト代表弁護士の木下です。
連日のゴルフの話題になって恐縮ですが、先日日頃から親しくさせていただいている毎日放送の上泉雄一アナウンサーがホールインワンを達成し、その記念食事会に出席させていただきました。同じくゴルフ仲間で、毎日放送の「ちちんぷいぷい」の毎週の料理コーナーでお馴染みの高橋泰松さんのお店「ラビアラッテ」で愉しい一時を過ごしました。
以前お話したようにホールインワンは私の憧れです(3万年に一度の快挙【有村智恵プロ、アルバトロス&ホールインワン】)。また、上泉アナウンサーは、司法書士法人代表の上野司法書士の義理のお兄さんで、彼が司会をするテレビやラジオの番組に私が出演させていただいたり、私の弟の結婚式の司会をお願いしたことがあって、正に公私共々大変お世話になっています。ですから、その上ちゃんがホールインワンを達成したことは、私にとって非常に嬉しくもあり、羨ましくもあります。
しかも、上ちゃんがホールインワンを達成したのは西宮六甲ゴルフ倶楽部というコースなのですが、これは私と一緒にメンバー登録した我々のホームコースですから、嬉しさも倍増というところです(写真は泰松さんのお店に飾られている、その11番池越えのショートホールの絵画です)。
さて、このホールインワンですが、この快挙を達成すると、ゴルフ場に記念植樹をしたり、特注タオルなどの記念品を作成して仲間に配ったり、記念パーティーを催したりで、ホールインワン達成ゴルファーにとっては受難と申しますか、日本では結構な出費になることがあります。
ゴルフをされない方は、何故お祝いされるべきホールインワン達成ゴルファーの方が出費をしなくてはならないのか、不思議に思われるかもしれませんが、一説には厄払いとも言われていて、とにかく伝統的にそういう慣習なんです。そこで、保険会社もホールインワン保険なる商品を開発します。文字どおり、ホールインワン達成時に支払われる保険金なわけですが、ホールインワン保険については、その支払を巡ってトラブルも少なくありません。唯一最大の争点はホールインワンの証明です。このハードルを低くすると、同伴競技者と結託してホールインワンを虚偽申告し、保険金詐欺を企む人が出てきます。そのため、多くの保険会社では、キャディによるホールインワン証明を要求していたのですが、最近はゴルフのプレースタイルも変化して、気軽に楽しめてリーズナブルなセルフプレーが人気で、キャディを付けてラウンドする機会が激減しています。そうすると、本当にホールインワンをしたゴルファーまで、ほとんどのケースで保険金は下りなくなり、ホールインワン保険は無用の長物となってしまいます。そこで、現在ではさすがに同伴競技者の証明だけではダメだが、コース内を整備しているゴルフ場の従業員やコース内の売店のスタッフなど中立的な第三者の証明であればキャディ以外でもOKで保険金を支払うという保険会社が増えています。
ただ、それでもトラブルになるケースは残ります。以前私の事務所で扱った事件で、ホールインワン保険金の支払を巡って裁判になったものがありました。あるゴルファーがホールインワンを主張したのですが、セルフプレーでキャディはいませんし、このホールインワンを見ていたゴルフ場のスタッフはいませんでした。ところが、一組前のグループがこのホールインワンを目撃したらしく、ちょうど目撃したホールインワンの感想をガヤガヤと喋りながら、このショートホールの後の売店に入って来たのです。この売店のスタッフが、「後ろの組、ホールインワンが出たよ」、「ワンバウンドで綺麗に入ったんだよね」、「羨ましいなぁ」という会話を聞いたことに争いはありません。そこで、このゴルファーが保険金の支払を請求したところ、保険会社がホールインワン達成の証明が不十分として支払を拒否したため裁判になったわけです。
この保険会社の規約では、売店のスタッフの証明もOKですが、それは直接の目撃証言だけで伝聞ではダメなのです。また、前後のグループの証明も認めていなかったので、形式的には支払拒否は正しい運用になります。
しかし、ゴルファー側はそれでは収まりません。「俺はこの日のために、何年も保険を掛け続けて来たんだぞ!やっと出た俺のホールインワンにケチをつける気か!?」とカンカンに怒りました。保険金が下りないこともさることながら、名誉あるホールインワンに対して、嘘つき呼ばわりされたようで、プライドも傷ついて余計に感情的になるのだと思います。
思うに、折角のホールインワンがトラブルのもとになるのは悲しいのですが、たしかに伝聞では証明力が弱いし、前後のグループの証言が微妙なことも事実です。ゴルフではコンペと言って、前後のグループのゴルファーが友人であることが多いですし、たとえコンペでなくても、ゴルファー仲間で顔見知り程度の可能性はあって、やはり中立的な第三者には当たらないことも多いからです。
しかし、このケースでは伝聞とはいえども、ホールインワン目撃直後の会話だけに、興奮した様子の臨場感や会話内容の迫真性及び具体性があり、ホールインワンそのものの信用性は高いものでした。そこで、形式的な保険会社の主張ではなく、実質的な状況証拠を重視して、保険金から一部減額して解決金を支払う和解が成立しました。ホールインワンを達成したゴルファーの名誉も守れて良かったです。
私もホールインワン保険には入っているのですが、最近は私もセルフプレーが多いですから、もしホールインワンを達成しても、保険金は下りないかもしれません。どうしたら証明できるだろうと考えながら、ショートホールのティーショットを打つときもありますが、ホールインワンどころかグリーンにすら乗らないことがほとんどです。
まだまだホールインワン保険金の支払を心配する機会はなさそうですが、それはそれで平和なことだと思って、これからもゴルフを楽しみたいですね。

