アクティブイノベーションウエスト代表弁護士の木下です。
我々が生活する世の中では、技術の進歩や価値観の変化などによって、法律の抜け穴が見つかったり、従来の法的ルールではうまく対応できなくなるケースがあることは、これまでにも触れてきました。その都度改正を迫られる法律の世界というものは、堅苦しそうでいて意外と柔軟性や合理的な変化を求められます。
最近も、そのような柔軟な対応を迫られる法律改正案の話題を目にしましたので、今日はこれを取り上げてみます。
皆さんは、「押し買い」という言葉をお聞きになったことがあるでしょうか?
高齢者などの自宅を強引に訪問して、貴金属などを不当に安い値段で買い取る商売のことです。文字通り「押し売り」の反対ですが、最近の金の価格の高騰に目を付けた新たな消費者問題です。国民生活センターに寄せられた相談件数は今年9月末で1857件に達しており、昨年の同時期と比べて8倍余りに及んでいるそうです。
余談ですが、私のパソコンで「おしうり」と入力すると、すぐに「押し売り」と変換されましたが、「おしがい」や「おしかい」と入力しても……!?という感じで、この辺からも新手の問題であることがリアルに感じられました。
これまでの法的規制によると、押し売りによって購入させられた商品は、契約から8日目までであれば、クーリングオフによって無条件で解約して返品することができました(特定商取引法第9条1項1号)。一方、このクーリングオフは商品の購入に対してだけ適用されるものであって、消費者の方が売主になる「押し買い」に対しては適用できず、有効な救済手段がありませんでした。
しかし、「押し買い」についても、「押し売り」と同じように消費者を保護する必要があることに争いはありません。突然の訪問によって、正常な判断が十分に働かない状況下で強いられた不当な取引を規制するというクーリングオフの立法趣旨は、商品を購入させられようと売却させられようと、等しく当てはまるからです。そこで消費者庁は、「押し買い」にもクーリングオフが適用できるように、近々特定商取引法を改正する方針を固めたようです。早ければ来年の通常国会において、改正案が提出される見込みで、迅速な対応がされて良かったと思います。
冒頭でも述べましたが、法律というと何だか難しいだけでなく、古めかしいイメージをお持ちの方も多いと思いますが、意外と柔軟で新しい変化に対応していることがお分かりになると思います。我々も時代や社会の変化に合わせて改正される法律に適応しなければならず、日々研鑽を積む必要があります。
ただ、理想を言わせていただくと、法的紛争の解決のためには、法律改正の有無に関わらず、知恵を絞ったり情熱を持って、あるべき結論に導くことが求められると、私は思います(「知恵」はともかく、法的紛争の解決に「情熱」のような精神論を持ち出すのはおかしいと感じる方もいるかもしれないですが、これも紛争解決のための大切な要素です)。ですから、「押し買い」に遇われた方は勿論、既存の法律では対応できない可能性がある悩みを抱えておられる方も、諦めずに早めに一度我々弁護士にご相談いただきたいと思います。