弁護士の木下です。

  先日、週刊プレイボーイ2013年2月11日号に女性弁護士のグラビアが掲載されました。このグラビアの噂は事前に聞いていたのですが、電車の広告で「初手ぶら」の文字を見て、「さすがにそれは嘘でしょう!?」と驚き、真偽を確認したくて購入してみました。
  結論から申し上げると、紛れもない「手ぶら」で、かなり大胆な露出のグラビアが掲載されていて、久々にびっくり仰天しました。しかし、世間だけでなく、意外にも業界内の反応も小さかったようです。司法改革以降、様々な型破り弁護士の増加に慣れてきたとはいえ、かなりお堅い弁護士業界としては、今回はさすがにコメントしにくいテーマだったのかもしれません。
  ところで、グラビア掲載に踏み切った彼女の動機について、疑問に思った方も多いでしょうが、雑誌の写真に添えられた文章を見ると、『自由』とか『チャレンジ』という言葉が並び、弱い立場の女性達が気軽に法律相談に訪れるきっかけになれば…と考えてグラビアを撮ったという趣旨の説明で締めくくらていました。
  ………う~ん、これが彼女の肉声そのものではなくて、出版社側の脚色が入っていることを割り引いたとしても、本当にそうなんでしょうか?このコメントを見て、余計に疑問を感じた方は多かったはずです。この弁護士の手ぶらグラビアを見て、敷居の低さを感じ、気軽に弁護士に悩みごとを相談してみたいと思う女性って、本当にそんなにいるものか、かなり疑わしいからです。

  今回、この手ぶらグラビアを見て、私が改めて感じたことは、昔から取り沙汰されることが多い、「弁護士と敷居」の難しさです。昔から言われてきたように、弁護士の敷居の高さは由々しき問題です。これを町医者のように、親しみやすく下げることは司法業界の長年の課題でしょうし、彼女が言うように、そのために新たな『チャレンジ』をすることは、私もとても大切だと思っています。
  ただ、他方で私が最近強く感じることは、我々弁護士が扱うトラブルというものは、やはり相当にデリケートな問題が多いので、余り「お気軽に」という言葉を強調したり、乱発することも少し違うのではないかということです。感覚的なことなので、言葉で上手く伝えることは難しいですが、相談者と弁護士がデリケートで深刻なトラブルを一緒に考えながら、きちんと解決していくためには、ある一定の真面目さや真摯な姿勢は必要だし、然るべきタイミングや重い覚悟のようなものも大切になってくるように思うからです。相談者がトラブルに向き合う準備が全くできていないのに、伝統的に良い意味での法律事務所の真摯な雰囲気を無視して、闇雲に敷居の低さや「お気軽に」という呼び込みを強調してみても、お互いに良い解決には至らない可能性があります。敷居を下げて早期にご相談いただくことは間違いなく良いことだとしても、過剰な「お気軽に」の呼び掛けのもとに、余りにフワフワした空気になることは、相談者にとっても、肝心のトラブル解決にはマイナスになりますし、結局のところ、このグラビアが訴える「お気軽に」とは、私が考える敷居の低さとは異なるのだと思います(私は、弁護士に対する依頼をスムーズにできる方法などについて、現在出版の準備をしていて、正にこの弁護士の敷居のことも執筆中です。なかなかうまく書けなくて、昨年秋から弁護士の業務以外のほとんどの時間を執筆に充てていますが、今春出版されましたら、そちらも参考にしていただけると、私のニュアンスもご理解いただけるかと思います)。

  一つ確実に言えることは、偉大な先輩弁護士達によって何十年と守られてきた弁護士という職業に共通して存在した信頼は、もはや崩壊しつつあるということです。多様な人材の輩出を目指した司法改革の目的は正しいし、適切な情報開示など、時代と共に変化していかなくてはいけないポイントはあると思います。
  しかし、一方でどんなに時代が変わっても、守らなくてはいけない弁護士像の本質もあると思います。間違った方法論による司法改革は、多少のゆとりを持って丁寧に仕事に取り組む法律事務所の真摯で良質な雰囲気も壊しつつあります。トラブルの解決に向けた厳格さを一切伴わない「お気軽に」の蔓延は、今後ますます相談者と弁護士の信頼関係の構築を難しいものにしていくのではないか…私は、この手ぶらグラビアを見て、そのような心配をしています。