弁護士の木下です。
先週、現在裁判をしている相手方の代理人弁護士が破産した旨の上申書を受け取りました。上申書には、たしかに裁判所による破産手続開始決定書が添付されていました。
この弁護士は、弁護士法人の形態を取っていたので、弁護士法人と所属弁護士個人の両方が破産したわけですが、どちらにしても、破産は弁護士の資格喪失事由ですから(弁護士法第7条第5号)、今後は代理人としての訴訟活動はできなくなります。
このようなときに、この弁護士に委任していた依頼者が気の毒に思われるでしょうが、実はその相手方となる私の依頼者もかなり気の毒であることは見過ごされがちです。突然、相手方の代理人弁護士が不在になり、裁判期日が空転してしまうからです。代理人がいなくなった相手方がこちらの請求を認めてくれれば話は早いのですが、代理人がいなくなったからといって、本人の裁判が負けたわけではないので、新しい弁護士に依頼するなり、本人訴訟を選択するなりで裁判は続行されます。そして、仮に新しい弁護士を選任することになれば、そのために一定の時間を要するだけでなく、さらに新しい弁護士が事案の把握に時間を要するため、あっという間に数ヵ月は解決が遅れる可能性が高くなります。全くの災難です。
この点、そもそも依頼者と弁護士との間の委任契約は、何時でも辞任又は解任により終了できますから、何も弁護士の破産に限らず、途中で弁護士が辞任したり解任されて、新しい弁護士に交代するということは起こり得ることです。私も、諸事情から受任していた事案を辞任せざるを得なくなったことはあります。しかし、このような辞任は、依頼者との連絡不通、着手金の不払いなど、また解任は、弁護士の事件処理の怠慢、処理方針の違いなどを理由とすることが多く、示談交渉段階など、どちらかと言えば比較的早い段階で起こることが一般的です。したがって、裁判が佳境を迎えての弁護士の破産による交代とは異なるところがあり、こちらの依頼者も巻き添えに遇ったみたいで、少々やるせない気持ちになります。
なお、より深刻な問題として、今回の弁護士の破産が預り金の横領など、従来典型的だった不祥事を理由とするものではないらしいことが挙げられます。
今後は真面目に業務をしていても、他の多くの業種と同様に破産や事業廃止せざるを得なくなる弁護士は増えると思います。弁護士の資格を取れば収入が保証される時代はとうに終わっていて、弁護士になってからが勝負の始まりですから仕方ないでしょうが、依頼者の方も自衛のために、一層弁護士の良し悪しを吟味する意識が問われる時代になっていくと思います。