弁護士の木下です。
先月になりますが、法制審議会から、少年の有期刑の引き上げなどを柱とする少年法改正要綱が答申されました。今後はできる限り速やかに法制化の作業が進められ、成人による犯罪との量刑格差が更に縮められる見込みです。
今回の改正要綱によると、これまでの少年法の有期刑の上限が15年だったものが20年に引き上げられるとともに、不定期刑の短期の上限が5年だったものが10年に、長期の上限が10年だったものが15年に引き上げられます(不定期刑については、「少年法の不定期刑の改正は必要か?」【富田林少年殺人】参照)。したがって、これまでの少年法では、刑期に幅がある不定期刑を選択することになった場合、5年~10年の刑期が一番重かったわけですが、この改正要綱によれば、犯行時に未成年の少年であったとしても、動機や犯行態様が悪質であるため、もっと重い刑罰を加える必要があると裁判所が判断すれば、従来より重い刑罰を言い渡すことができます。例えば10年~15年という不定期刑を選択できることになり、選択できる刑期の上限がかなり広がることになります。
この改正要綱は、私が以前被害者参加で関与した刑事裁判の判決の影響を強く受けています。実は、法制審議会において、上記ブログにも記載しました富田林少年殺人事件の判決が頻繁に議論に上っていて、かなり強い影響を与えているらしいことはお聞きしていたのですが、今回日経新聞などの記事では、この判決が改正要綱を強く後押ししたことが改めて紹介されていました。
この判決において、裁判所は、法定刑の範囲が狭すぎるため、裁判所としても不満の残る判決を選択せざるを得なかったとして、現行少年法を敢然と批判するという、極めて異例の付言に及びました。もう少し噛み砕いて申し上げるなら、「言い渡しをしておいて申し訳ないが、この判決は不十分な刑であり、言い渡しをする裁判所としても実は不満である。しかし、それは少年法が悪いからであって、裁判所としては、いかんともし難いから、早急な法改正が望まれる」という趣旨の言及でしたから、やはり今思い返してみても、かなり異例の判決だったと思います。
そして、特筆すべきは、判決の内容そのものではなく、この判決の付言として述べられた少年法批判が法制審議会に対して、これ程の影響を与えたということです。やはり、現実に起こる重大事件をリアルに裁いている裁判所の切実な感想は、たとえ判決の付言であったとしても、とてつもなく重いということを、私は痛感しました。
念のために申し上げると、私もただ闇雲に少年の厳罰化を続ければ良いとは思わないことは、以前も上記ブログにおいて述べました。
ただ、証人らの意見に直接耳を傾けて、現実の事案に最も相応しい判断を下すことができるのは、やはり立法者ではなく、具体的な個々の事案に向き合う裁判所でしょう。その現場の判断を最大限に尊重できる仕組みが望ましく、極端に狭い法定刑しか用意していない法律は現実的ではないと思います。いわば厳罰化ではなく、適度な広範化が望ましく思われ、今回の法改正も、その方向に是正されているものと考えられますから、ご遺族のお気持ちを察すると、私も僅かでも報われる気持ちがしました。
最近も、余りに理不尽なルーマニア国籍の少年による吉祥寺駅前強盗殺人事件が発生したばかりですが、凶悪犯罪の低年齢化という社会現象にはなかなか歯止めが掛かりません。
社会の変化と共に、常に法律は改正され、その時代ごとで、あるべき姿を変えていきます。したがって、我々弁護士も今日の常識が明日の常識とは限らないことを疑いながら、現行の法律やルールを遵守しつつも、常にこれらの適正さを疑う精神を持ち続けるように努めなくてはならないのだろうと思います。