先週に続いて、宝塚市役所放火事件の雑感をお話します。
今回の事件は、滞納していた固定資産税の督促をされて、被疑者が腹を立てたことが犯行動機として報道されていますが、この被疑者は1995年にマンションを購入した後、これまでに一度も固定資産税を支払っていなかったらしいです。
この点、支払義務がある固定資産税を支払わない被疑者が悪いのは当然であって、法的に宝塚市には何の落ち度もありません。しかし、他方で私は、この宝塚市の応対には改善の余地があって、今回のような惨事を招いた遠因として、少しは理解できる気がしました。この被疑者の固定資産税の滞納合計がいくらに及んでいたのかは確認していませんが、支払義務があるお金であっても、余りに長期間未払状態で置いておくことは、請求する債権者側にも様々なリスクが発生するからです。
18年間もの間、一度も支払をしないまま、曲がりなりにも済んできた相手方とすると、本来は支払うべきお金でも、次第に何だか支払わなくてもよいお金になったかのような錯覚に陥ることが多いです。例えば税金でも賃料でもよいですが、1ヶ月分の債務である5万円を滞納したときに、6ヶ月分の30万円であれば、まだ分割して、少しずつ支払える余地があるかもしれませんが、60ヶ月、すなわち5年も経ってから、まとめて300万円を請求されて、皆さんはすぐに支払う気分になれるでしょうか。本来は支払うべき自分の負債であることは分かっていても、「こんなお金、今更まとめて払えるわけないやろっ!」と憤る人の気持ちは不当ながら、全く想像できなくはないし、現実にそのように感じる人は少なくありません。滞納金額が膨らみ過ぎると、支払のリアリティが湧かなくなりますし、支払わなかった自分の落ち度は置いておいて、回収を怠った債権者に責任転嫁したくなるものです。
実は私の顧問先に、マンションの管理会社があり、以前は数年分の未払賃料について、まとめて請求する相談に来られることが多かったのですが、口を酸っぱくして、早めの請求や法的手続きを促すようにしたところ、随分滞納金額が小さくなり、トラブルが未然に防げるようになりました。
滞納金額が大きいと、単純に支払が厳しくなって、解決が遅れるということはもちろんですが、そもそも請求されることに腹を立てて、逆ギレする人が多くなることは、日々の弁護士業務の中でも経験する紛れもない事実です。したがって、私は、依頼者に対して、継続的な支払が積もって巨額になった金銭請求は、支払わない方が悪いことは当然としても、支払をしないで長期間放置している方にも責任があるということを説明して、予防法務に努めてもらうようにしているのです。
今回の件は、宝塚市側もマンションを差し押さえたり、預金を差し押さえたりして回収に努めたらしく、放置していたわけではないことは分かっています。
ただ、前者の差押えが2003年で滞納開始の8年後、後者の差押えに至っては昨年らしく、やはり対応が遅過ぎる印象は否めません。この辺りは執行制度にも不備があり、手続きに時間がかかるという理由もあるのですが、それは最初から分かっているのですから、やはり滞納金額が膨れ上がる前に、早め早めの応対が必要だと思います。そのような厳しくても、丁寧な請求をすることは、請求する人だけでなく、結果的には請求される人のメリットとなり、税金であれば、納税の公平をも担保することになるはずです。
規範意識が乏しく、請求に対して逆ギレするような人が増えると、支払義務があるのに自主的に支払わない方が悪いという理屈だけでは難しく、債権者側も滞納者の心理を推し測って、これまで以上に債権管理にも気を遣わなくてはならず、大変な時代になって来たと思います。