アクティブイノベーションウエスト代表弁護士の木下です。
大相撲の八百長問題が大きく取り上げられています。
今回は、ただの噂レベルではなく、メールという物証があって、映像を通じて、それを裏付ける実際の取り組みの検証までされていますから、相撲協会にとって、かなり厳しい対応を迫られるでしょう。
私も、子供のときにブームだったプロレスを熱心に応援していたことがありますが、プロレスが八百長だと取り沙汰されて、子供なりにかなりショックを受けた記憶があります。
しかし、相撲は国技であり、プロレス以上にシンプルなルールで勝負しますから、真剣勝負を楽しみにしているスポーツファンからすると、より強く裏切られたような気分になると思います。
まず、一般の方が最初に疑問に感じられるのは、そもそも八百長などという、そんな不誠実なことをしても許されるものなのか?何らかの罪に問われないのか?ということだと思いますが、日本の刑法には八百長そのものを処罰する規定はありません。
もちろん、大相撲は有料で興業していますし、その観客のほとんどは真剣勝負を楽しみに観戦に来ていると思いますから、不誠実なことは間違いないのですが、これを犯罪として処罰できるかは別問題だということです。
次に、一般の市民感覚からすると、「八百長だったなら、入場料を返せよ!!」、「そんなの詐欺や!!」という声が上がりそうです。
しかし、入場料は一つ一つの取り組みの観戦の対価として、個別に分けて支払われているわけではないですから、八百長が数組あっただけでは、八百長によって個々の力士が観客から直接入場料全体を騙し取ったとまでは言えず、詐欺の立件は難しいと思います。
観客から直接入場料を得ていたのは力士ではなく相撲協会ですから、もし相撲協会が組織ぐるみで八百長を仕組んで、真剣勝負を見に来た観客から入場料を騙し取っていたのであれば、理論的にはまだ詐欺を問える可能性が考えられますが、相撲協会までもが八百長に関与していたわけではないでしょうし、現実に証明するのはかなり難しいです。
詐欺を立件するのは難しい、とよく言われるのが分かります。
ただ、あくまで詐欺という観点にこだわるのであれば、観客よりは懸賞金のスポンサーに対する詐欺の方がまだ成立する可能性があると思います。取り組み前に、土俵上に垂れ幕の広告を出して、その取り組みに勝った力士が懸賞金をもらう、あの光景のことです。
スポンサーも観客同様、魅力的な取り組みの真剣勝負が注目されることを期待して懸賞金を出しているはずです。イメージが悪くなるような八百長の取り組みに、わざわざ懸賞金を出しているとは考えにくく、真剣勝負を装って八百長で懸賞金を騙し取った力士に対しては、詐欺罪の立件を求めて、告訴できる可能性があると思います。
真剣勝負を楽しみに入場料を払って来てくれている観客に対して八百長を見せるのは、詐欺罪には当たらないとしても、やはり観客を食い物にしていますし、しかも白星の売り買いをしているのは情状としても悪質だと思います。ですから、私は、個人的には新たに八百長罪という類型の刑罰を創設してもいいように思います。
時代の流れと共に、新しい罰則が作られたり、反対に廃止されることは、何も珍しいことではないです。
最近でも無謀な自動車の危険運転に対して、危険運転致死傷罪が創設されましたし、反対に昔存在した姦通罪や尊属殺人罪は廃止されています。
相撲協会や国が、国技を守るために、どのような改革をするのか、注目したいと思います。