アクティブイノベーションウエスト代表弁護士の木下です。
今週末は大型の台風12号が西日本に上陸し、記録的豪雨によって、大きな被害をもたらしました。昨晩の時点で死者22名、行方不明者55名以上の被害が発生しています。慎んでお悔やみとお見舞いを申し上げます。
このように古来より、日本人が最も悩んできた災害の一つである台風ですが、日本の台風報道において、これらの台風を表記するときに、「大型で非常に強い」台風〇号という呼び方をお聞きになったことがあると思います。今回の台風12号についても、報道上「大型の台風」という表記がなされていました。実は一口に台風と言っても、その規模や危険度をいち早く伝えるため、気象庁によるルールによって意外に細かく分類されているのです。私は、以前これは台風の大まかな勢力を見て、マスコミが独自に「大型」とか「非常に強い」という形容詞を使っているのだと思っており、最近までこれは日本の気象庁が予め決めた分類に従った報道であることを知りませんでした。この気象庁の分類は、『大きさ』と『強さ』によっていくつかに区分されています。
例えば、風速が毎秒15メートル以上の半径が500㎞~800㎞までのものを「大型」の台風、それ以上のものを「超大型」の台風と表記します。
また同様に、台風の10分間平均の最大風速が毎秒32.7~43.7メートルだと「強い」台風、54.0メートルまでだと「非常に強い」台風、それ以上だと「猛烈な」台風と表記します。
したがって、これらの予め決められた『大きさ』と『強さ』の分類を組み合わせることによって、「大型で非常に強い」台風などの表記で報道されることになり、マスコミの気分どころか、極めて緻密な分類に基づく報道がなされているわけです。この辺りの緻密なルール化は、たとえ法律によらなくても、日本人の得意なところかもしれません。
ところで、この気象庁による分類基準は以前は更に細かく区分されていて、『大きさ』の分類では「大型」の下に「中型」、「小型」、「ごく小さい」という類型がありましたし、『強さ』の分類では「強い」の下に「並みの強さ」、「弱い」という類型がありました。したがって、これらの組み合わせによっては「ごく小さい弱い」台風という表記もあり得たわけですが、これでは危険度を過小評価する人が本来回避できたはずの被害に遭うリスクが高くなるため、2000年6月1日より、それぞれ「大型」と「強い」より下の表記は廃止されました。このため、現在ではこれらの小規模の台風については、単に台風と呼ばれるだけで、わざわざ「小型」とか「並みの強さ」という微妙な形容詞をつけることはなくなりました。
今回の台風12号は規模は大きかったものの、最大風速は毎秒20メートルとそれほど強くなかったため、以前の基準によると「大型で弱い台風」か「大型で並みの強さの台風」という表記になってしまうのですが、これでは台風を甘く見た人が逃げ遅れて更に被害が拡大しかねませんでした。今回は現在の分類基準に従って、単に「大型の台風」と報道されたわけですが、台風報道はあくまでも国民の安全を確保するためになされるのですから、過小評価を連想させる「並みの強さ」などの情報は不要だと考えられ、気象庁によるこの改正は賢明な判断だったと思います。
もっとも、この改正をもって台風報道としては完璧に役割を果たすようになったと言えるのかについては、更なる議論の余地があると思います。
実際に今回の台風12号は『強さ』の基準となる風速はそれほどではなかったかもしれませんが、雨量が物凄かったため、深刻な被害を引き起こしたにも関わらず、そもそもその雨量の危険度を表記する基準がありませんでした。このような場合、単に「大型の台風」だけでなく、もし「大型で非常に激しい集中豪雨をもたらす台風」などのように、風速は強くなくても、雨量が桁違いで危険だと一発で印象に残る表記ができれば、豪雨に伴う水害が心配な人が早めに避難し、もう少し被害を抑えられたかもしれません。ですから、今後『大きさ』『強さ』以外の基準も表記に加えることを検討した方がよいと思います。多大な被害をもたらした今回の台風が、せめて将来の災害による被害防止策の改善に役立って欲しいと思います。