東京事務所の木下です。

  先週末、仕事で香港と中国の深圳に行って来ました。
  香港は以前にも行ったことがあり、街の活気は分かっていましたが、一つの地方都市くらいに考えていた深圳の活況ぶりには目を見張るものがありました。駅前の再開発が進み、大型ビルが建ち並んで、この数年間で街並みは様変わりしたそうです。地元の方に聞くと、2011年夏季にユニバーシアードが開催されたときに、国がお金を出して、新しいビルを建てたり、古いビルの外装を大幅にやり直して、徹底的に見映えを良くしたらしいです。昨年、上海のリニアモーターカーに乗車したときにも、まとまった大きな事業をやりきる中国の国力に感嘆したものですが(リニアモーターカーの到達点が示す日中の差異)、今回もそのパワーを見せつけられた気がしました。

  このように、高度経済成長中の中国ですが、最近は不動産のローンを支払うことができず、これを手放す人が随分増えているとお聞きしました。一時の日本と同じで、香港辺りの地価はかなり高騰していて、バブル気味になりつつあるようです。今後、不動産の任意売却が増加する可能性があり、これに関わる仕事の説明を兼ねて現地を見てきたわけですが、現在のところ国の統制がネックになっていて、逆にここがクリアされると、今後一気に一部の不良債権処理のビジネスが加速するかもしれません。

  ところで、今回はこの任意売却関連の仕事とは別に、同行の方が中国で銀行口座の開設をされたので、香港でプライベートバンカーとお会いする機会がありました。
  実は、私はこれまでプライベートバンクに関する正確な知識がなく、日本では「個人銀行」と誤訳されることが多いプライベートバンクは、個人で銀行業務を営む人で、ときには無茶なリクエストにも応えてくれる、コンシェルジュ的な要素が強いものと誤解していました。また、他方で弁護士になりたての頃、外国人の出入国管理法違反の刑事弁護をたくさん担当したのですが、不法滞在で逮捕される外国人は、不法滞在がバレることなく本国に送金するために「地下銀行」と呼ばれる、銀行的な業務を営む個人事業者を利用していたので、「個人銀行」と聞くとこのイメージが強く、少し怪しげな仕事も扱うのかもしれないくらいに勘違いしていました。お恥ずかしい限りです。
  今回お話をお聞きして分かりましたが、実際のプライベートバンクは、「個人の富裕層を対象とする資産管理のための銀行」です。最低1名以上の無限責任を負うプライベートバンカーがパートナーとして経営に参画していることが条件となります。

  このプライベートバンクのメリットとして、口座を開設すれば脱税ができるかのようなセールストークがなされることがありますが、これは誤りです。どこの国でも脱税は脱税で犯罪になります。
  それでは、プライベートバンクのメリットはどこにあるかと言うと、このプライベートバンカーは厳格な顧客情報の秘匿性や守秘性を挙げておられました。そんなことは銀行なら当たり前だと思われる方がいるかもしれませんが、日本では比較的簡単に銀行内で有名人の預金高などの情報を覗き見できてしまうこともあるようで、意外に当たり前のことではないようです。
  たしかに、水商売の女の子に入れ上げて、お小遣いを振り込んであげたら、後日、「俺の彼女にちょっかいを出して、どないしてくれるんじゃ!!」と、チンピラ風の怖いお兄さんに因縁をつけられて、恐喝された人の法律相談を受けたことがあります。このとき相談者の方は、どうして現金振込をしただけで、自分の身元が特定されるような個人情報が流出して、恐喝されるまでに至ったのか、非常に不思議がっていました。どのような経緯で、この相談者の銀行における個人情報が流出したのかは分かりませんが、個人情報保護法のような法律が施行されても、日本での情報管理にはかなりの危うさが伴うことを示す一例ではないかと思います。おそらく、富裕層と呼ばれる資産家の方々にとっては、個人情報の管理がこのように杜撰では、かなり気持ちが悪いでしょうし、防犯的にも身の危険を感じられるかもしれません。

  運用していただく資産は最低1億円とも5億円とも言われるプライベートバンクですから、個人的にプライベートバンクにお世話になる機会はなさそうですが、滅多にお会いする機会のないプライベートバンカーにお会いして、直接お話を伺うことができて良かったです。日本でも、富裕層の方がプライベートバンクにお世話にならなくても良いくらい、個人情報の管理はきっちりして貰わなくてはいけないですよね。