東北楽天ゴールデンイーグルスが巨人との日本シリーズ第7戦を制して、初の日本一になりました。
第6戦で160球の熱投が報われず、遂に今シーズン初黒星を喫した田中将大投手がまさかの連投で9回のマウンドに立ち、胴上げ投手になりましたが、まるで筋書きがあったかのような見事なフィナーレでしたね。肩や肘に強い炎症や張りがあり、万全ではない中での粋な計らいは、マー君の男気に応えると共に、チームを夢の舞台へと導いたエースへの深い感謝が伺われ、闘将と呼ばれながらも、人間味の強い星野仙一監督らしい名采配だったと思います(これが、ひたすら勝利への一番高い確率を重んじる落合博満監督などでしたら、いくらマー君が直訴しても、リスクのある第7戦の登板はなかったように思います)。
さて、話は数日前に遡りますが、先日私は、受任している仕事の関係で、仙台に行く機会がありました。
学生時代によく旅行した札幌や函館、弁護士法人を分社する前に仕事でよく訪れた広島や鹿児島は個人的に好きな街で、これらの街に降り立つとテンションが上がりますが、私にとって、ずば抜けてテンションが上がる街は、やはり大学時代を過ごした大好きな仙台です。仙台に降り立ったときの高揚感は、私にとって特別なもので、本当に幸せな気持ちになりますが、この日は、楽天と巨人の日本シリーズ第5戦があったこともあり、仙台の街全体も少しソワソワして落ち着かない感じでした。
その日の夜、私は、大学時代の親友の弁護士夫妻と一緒に、仙台市内で夕食を食べながら日本シリーズをテレビ観戦していたのですが、改めて楽天が地元の人達に受け入れられて根付いていることが分かり、嬉しいと共に、少し羨ましく寂しくも感じました。久しくプロ野球を真剣に観ていなかったですが、私が応援していた近鉄バファローズは、もうこの世にはなく、二度とこの大舞台に立つチャンスがないことを改めて思い出したからです(球団合併という大罪【横浜ベイスターズ売却】)。
私は、楽天が仙台に来てから、プロ野球ファンになったという奥さんに、近鉄バファローズは遂に一度も日本一になれないまま球団の歴史に幕を閉じたこと、楽天が球団創設9年目で日本一に手が届きそうなことはすごいことだし、何よりもそれを傍で応援できる球団があることは本当に幸せで羨ましく思うことを話しました。ところが、これを聞いていたご主人の方から、「たしかに近鉄はオリックスとの合併で消滅したけれど、その分配ドラフトで近鉄から加わった選手達は、楽天球団創設時の功労者だと思う。近鉄で培われた精神が受け継がれているから、今の楽天がある」と言われて、救われたような気持ちになりました。分配ドラフトで多くの近鉄の選手が移籍した…それも私が好きな仙台を本拠地とする球団に移籍した…それでも、素直に応援できないくらい傷付いた合併の悲劇が少し和らいだような気持ちになりました。
そして、その3日後、星野仙一監督が宙を舞い、楽天の日本一が決まりました。その瞬間嬉しさとともに、私には別の不思議な感情が込み上げてきました。
心の奥に押し殺していた小さな異物がしゅわ~と溶けて消えていくような…そして、コトンという微かな音とともにフッと、少し気持ちが軽くなったような、合理的な説明が難しい摩訶不思議な感覚でした。私は、これまでにそのような感情を経験したことがなかったし、まさか楽天の劇的な日本一を見届けた瞬間に、そんな繊細な感情が湧いてくるとは、事前に全く予想していなかったので、最初は戸惑いましたが、すぐにその感情の正体が理解できて、じわっと別の柔らかい喜びが広がりました。
「あぁ、たぶん解放されたんだなぁ~」と、嬉しくて、静かに微笑みました。
自分では区切りをつけたつもりでも、気が付かないまま心の奥に住み着いている悔しさとかトラウマって、やはりあるものですね。
私は、本当に熱烈な近鉄バファローズのファンでしたから(ソフトバンクホークス完全V)、あの日の合併の悲劇以来、すっかりプロ野球に冷めて、無関心を装っていましたが、それでも心の深いところで傷付いていました。たかがスポーツと思われる人もいるかもしれませんが、こういう悲しみは、本当に好きになったチームが消滅した経験をした人でないと分からないと思います。こういう悲しい思いをしたことは、今の弁護士の仕事に多少なりともプラスになっていると思うときはありますが、できればしたくない経験ですし、4回進出した日本シリーズのうち、3回で3勝4敗と惜敗し、あと一歩のところで12球団中、唯一悲願の日本一に手が届かなかった近鉄バファローズの無念さが、私の中で、9年経ってもまだ成仏できていなかったのだと思います。近鉄の精神を受け継いでくれた楽天…もちろん楽天は近鉄とは違いますが、先日の友人の言葉もあって、今回、楽天が近鉄の呪縛から私を解放してくれたような瞬間でした。
これで、楽天のファンになれるという単純な話でもないのですが、少なくとも、私にプロ野球を冷ややかな目で見させていた正体である、黒い小さなもやもやが溶解して、明日からプロ野球を許せるような気がしました。
おめでとう、楽天イーグルス!
ありがとう、楽天イーグルス!
本当にありがとう。